社員発案で会社のワーケーション制度を作る・改善する具体的な働きかけ
ワーケーションへの関心が高まる中、実際に導入している企業がある一方で、多くの企業ではまだ制度が整っていないのが現状です。会社の規定がない、あるいは曖昧であるために、ワーケーションを実践したくてもためらってしまうという方も少なくないでしょう。
制度がない場合、会社からのトップダウンでの導入を待つのが難しいこともあります。しかし、社員一人ひとりが声を上げ、働きかけることで、会社の制度や文化を変えていくことは十分に可能です。この記事では、社員が主体となって、自社のワーケーション制度を導入または改善するための具体的なステップと、成功に導くためのポイントを解説します。
なぜ社員からの働きかけが重要なのか
企業が新しい制度を導入する際は、経営層や人事部門主導で行われることが一般的です。しかし、ワーケーションのような新しい働き方は、現場の働き方や文化に深く関わるため、実際に働く社員の視点やニーズを反映させることが不可欠です。
社員からの働きかけは、以下のような点で重要となります。
- 現場のリアルな課題とニーズを伝えられる: 実際に子育てをしながら働くパパママがどのような課題を抱え、ワーケーションに何を期待しているのか、具体的な声として伝えることができます。
- 企業メリットを現場目線で補強できる: 生産性向上、従業員エンゲージメント向上、採用力強化といった企業のメリットを、自身の経験や同僚の状況を踏まえて、より説得力のある形で提示できます。
- 文化変革の推進力となる: 一部の社員が積極的に働きかけ、試験的な取り組みを行い、その成果を共有することで、社内の理解を深め、ワーケーションを「特別なこと」ではなく「働き方の一つ」として定着させる流れを作ることができます。
制度がなくても実践できるアプローチも存在しますが、持続可能で多くの社員が利用できるようになるためには、やはり会社の正式な制度や規定が整備されていることが望ましいです。
ワーケーション制度導入・改善のための具体的な働きかけステップ
社員が主体となってワーケーション制度の導入や改善を働きかけるための具体的なステップをご紹介します。
ステップ1: 現状分析と課題の特定
まず、自社の現在の働き方、既存の休暇制度、リモートワークに関する規定(もしあれば)、そして社内文化を把握することから始めます。
- 現在の働き方で抱える課題は何でしょうか。
- どのような制度があれば、これらの課題が解決され、より働きやすくなるでしょうか。
- ワーケーションがどのような形で、現在の働き方や制度にフィットし得るでしょうか。
自身の経験だけでなく、同僚との informal な会話や、可能であれば簡単なアンケートなどで意見を収集することも有効です。特に、同じように子育てや介護と仕事の両立に悩む同僚の視点は参考になります。
ステップ2: 企業にとってのメリットの整理と情報収集
ワーケーションは社員にとってのメリットが大きい一方で、企業側にも無視できないメリットがあります。これらを明確にし、自社に当てはめて整理します。
- 具体的な企業メリット:
- 従業員の生産性向上と創造性の刺激
- 優秀な人材の獲得・維持(特に多様な働き方を求める層)
- 従業員エンゲージメントとロイヤリティの向上
- BCP対策(災害時などの事業継続計画)の強化
- オフィススペースコスト削減の可能性(制度の規模による)
- 情報収集:
- ワーケーションを導入済みの他社の事例を収集します。特に、同業他社や規模の近い企業の事例は参考になります。
- ワーケーションがもたらす経済効果や社会貢献に関するデータも、企業メリットを補強する材料となります。
- 自治体によってはワーケーション推進のための情報を提供している場合もあります。
これらの情報を収集し、自社の状況に即して整理した資料を作成します。企業メリットを具体的に、データや他社事例を交えて提示することが重要です。
ステップ3: 試験的な導入(パイロットプログラム)の提案
いきなり全社的な制度導入を提案するのではなく、まずは小規模な試験導入(パイロットプログラム)を提案するのが現実的です。
- 提案内容:
- 対象部署や参加者を限定する(例: 希望する部署、一定期間の参加者を募る)
- 期間を限定する(例: 1ヶ月間、特定の時期)
- ワーケーション可能な場所や条件を設定する(例: 国内限定、特定の施設利用)
- 効果測定の方法(例: 参加者へのアンケート、生産性の変化、コミュニケーションの質)
- 目的:
- ワーケーションが実際の業務に与える影響を検証する。
- 課題を洗い出し、本格導入に向けた改善点を見つける。
- 試験導入の成果を社内で共有し、理解を広げる。
試験導入は、リスクを抑えつつワーケーションの効果を実証するための有効な手段です。成功すれば、本格導入に向けた強力な推進力となります。
ステップ4: 関係部署との連携と非公式な意見交換
人事、総務、情報システム部門など、ワーケーション制度に関わる可能性のある部署の担当者と、非公式な形でも良いので意見交換を行います。
- ワーケーション導入にあたって懸念されるであろう点(セキュリティ、勤怠管理、コストなど)を事前に把握し、それに対する自分なりの考えや解決策を準備します。
- 各部署の視点や制約を理解することで、より現実的で実現可能性の高い提案につなげることができます。
- 協力者を見つけることも重要です。同じように柔軟な働き方を求める同僚や、新しい働き方に理解のある上司、人事担当者など、賛同してくれる人たちと連携します。
ステップ5: 経営層や意思決定者へのアプローチ
試験導入の成果や、これまでの情報収集・関係部署との連携で得た内容をまとめ、正式な提案を行います。
- 提案資料の作成:
- ワーケーション導入の目的(自社の課題解決と企業メリットに焦点を当てる)
- 試験導入の成果と課題
- 提案する制度の概要(対象者、期間、費用負担、申請フローなど)
- 懸念される点への対策(セキュリティ、勤怠管理、コミュニケーションなど)
- 期待される効果(定量・定性の両面で示す)
- プレゼンテーション:
- 会社のビジョンや経営課題とワーケーションを結びつけて説明します。
- 自身の経験や具体的な事例を交え、ワーケーションが働きがい向上や生産性向上に繋がることを熱意を持って伝えます。
- 子育て世代を含む多様な人材が活躍できる環境整備に繋がるという視点も重要です。
提案の際は、単なる希望として伝えるのではなく、会社の利益にどう貢献するのかを論理的に、かつ具体的なデータや事例を基に示すことが成功の鍵となります。
ワーケーション制度導入・改善のために社員が心がけるべきこと
制度導入や改善を働きかける過程、そして制度が導入された後も、社員自身が心がけるべき点があります。
- 業務成果の維持・向上: ワーケーション中も、オフィス勤務時と同等以上の成果を出すことが最も重要です。周囲の理解を得るためにも、自身のプロフェッショナリズムを示す必要があります。
- 責任ある行動と規律: 会社の規定(情報セキュリティポリシー、勤怠管理ルールなど)を遵守し、公私の区別をしっかりつけることが信頼につながります。特に未就学児とのワーケーションでは、仕事時間の確保やセキュリティ対策に工夫が必要です。
- 円滑なコミュニケーション: リモートでのコミュニケーションツールを効果的に活用し、同僚や上司との連携を密に行います。報連相をいつも以上に意識し、不在による業務停滞を防ぐ配慮が求められます。
- 前向きな情報発信: 自身のワーケーション体験やそこから得られた気づき、生産性向上に繋がった工夫などを、積極的に社内で共有します。成功事例を積み重ねることが、他の社員の関心を高め、制度への信頼を築くことに繋がります。
まとめ
会社のワーケーション制度が未整備であっても、諦める必要はありません。社員一人ひとりが主体的に考え、情報収集を行い、関係者と連携しながら、具体的な提案を行うことで、会社の働き方を変えていくことは十分に可能です。
まずは現状を分析し、ワーケーションが自社にもたらすメリットを明確にすることから始めましょう。そして、試験導入の提案や関係部署への働きかけを通じて、少しずつ理解の輪を広げていくことが重要です。
ワーケーションは、働くパパママが仕事と子育てを両立し、より豊かに働くための一つの選択肢となり得ます。社員発案での制度導入・改善は容易な道のりではないかもしれませんが、その努力はきっと、ご自身の、そして同僚たちの働きがいのある未来へと繋がるはずです。