会社制度が未整備でも大丈夫 ワーケーションを始めるための現実的なアプローチ
会社にワーケーション制度がない現状と、そこから始める一歩
「ワーケーションに興味はあるけれど、うちの会社にはそんな制度はないから無理だ」と感じていらっしゃる親御さんは少なくないかもしれません。特に歴史のある企業や、まだ新しい働き方への対応が遅れている組織では、ワーケーションという言葉すら耳慣れない状況かもしれません。しかし、制度がないことが、ワーケーションを諦める理由になるわけではありません。既存の仕組みを活用したり、段階的に理解を広げたりすることで、実践への道を開くことは十分に可能です。
この記事では、会社に公式なワーケーション制度がない状況でも、現実的にワーケーションを始めるための具体的なアプローチや、組織に理解を得ていくための考え方についてご説明します。
なぜ会社にワーケーション制度がないのか 理解すべき背景
まずは、なぜあなたの会社にワーケーション制度がないのか、その背景を理解することから始めましょう。考えられる要因はいくつかあります。
- 概念の浸透不足: ワーケーションという働き方自体が、経営層や管理職にとってまだ新しい概念であり、十分に理解されていない可能性があります。
- 前例がないことへの懸念: 「前例がないから難しい」「トラブルがあったらどうするのか」といった、変化への慎重な姿勢が背景にある場合があります。
- 具体的な懸念事項への対応策の検討不足: 情報セキュリティ、勤怠管理、評価、コミュニケーション、不公平感の発生など、ワーケーション実施に伴う様々な懸念事項に対する具体的なルールや対策がまだ検討されていない、あるいは不明確であるため、導入に踏み切れないという状況が考えられます。
- 業務内容との整合性: 対面での業務が中心であるなど、ワーケーションが難しいと考えられる業務が多い組織の場合、制度化の優先度が低いことがあります。
これらの背景を理解することは、会社に対してワーケーションを提案したり、既存制度を代替として活用したりする際に、どのような点に配慮し、どのような情報を提供すべきかを見極める助けになります。
制度がない中でワーケーションを始めるための現実的なアプローチ
公式な制度がない場合でも、ワーケーションに近い働き方を実現したり、将来的な制度導入への足がかりを作ったりするための現実的なアプローチをご紹介します。
アプローチ1: 既存の休暇制度やテレワーク規定の活用
最も現実的な第一歩は、現在会社にある制度を最大限に活用することです。
- 有給休暇と組み合わせる: 休暇を数日取得し、その前後に「テレワーク」として働く日を組み合わせる方法です。例えば、金曜日に有給休暇を取得し、月曜日に休暇先からテレワークで勤務するといった形です。この場合、あくまで「テレワーク」は会社の規定に沿った形で行う必要があります。
- 特別休暇や福利厚生制度の確認: リフレッシュ休暇、ボランティア休暇など、ワーケーションの目的(リフレッシュや地域貢献など)と合致する可能性がある特別休暇がないか確認します。また、会社が契約している福利厚生サービスの中に、宿泊に関する優待など、ワーケーションに活用できるものがないかも調べてみましょう。
- 既存のテレワーク規定の拡大解釈・適用検討: すでにテレワーク制度がある場合、その適用場所に関する規定を確認します。「自宅」に限定されている場合が多いですが、「会社が認める場所」といった柔軟な規定であれば、自宅以外の場所(例: 親元、レンタルオフィス)での勤務も交渉の余地があるかもしれません。ただし、この場合は事前に上司への相談と許可が必須です。
このアプローチのメリットは、新たな制度を作る必要がないため、会社側のハードルが低い点です。まずは短期間の「お試しワーケーション」として実践し、課題や成果を検証するのに適しています。
アプローチ2: 会社への段階的な提案と試験導入の打診
将来的には会社全体でワーケーションを認められるようにしたい、あるいは上記のアプローチだけでは希望する形でのワーケーションが難しい場合は、会社への提案を検討します。ただし、いきなり全社的な制度導入を提案するのではなく、段階を踏むことが重要です。
- ワーケーションに関する情報収集: ワーケーションの定義、企業が導入するメリット(生産性向上、創造性の向上、社員エンゲージメント向上、採用力強化、コスト削減など)、他社の導入事例、課題とその対策(セキュリティ対策ツール、勤怠管理システム、コミュニケーションツールなど)について、正確な情報を集めます。信頼できる情報源(官公庁の資料、専門機関のレポート、企業の事例発表など)に基づき、整理します。
- 自身の業務における実現可能性とメリットの整理: 自分の業務内容であれば、ワーケーションによってどのようなメリットが得られるのか(例: 静かな環境での集中作業、新しい視点の獲得、家族との時間確保によるモチベーション向上など)を具体的に言語化します。同時に、ワーケーション中も業務を円滑に進められること、成果を維持・向上できることの根拠を示せるように準備します。
- 上司への相談: まずは直属の上司に相談します。自身のワーケーションへの関心や、仕事と育児の両立、心身のリフレッシュといった個人的な目的を伝えつつ、業務へのプラスの効果が期待できる点を説明します。この段階では、制度導入を求めるのではなく、「将来的にこのような働き方ができれば」という形で、まずは理解を求める姿勢が大切です。
- 試験的な導入(パイロット運用)の提案: 上司の理解がある程度得られたら、部署内やチーム内での試験的な導入を提案するのも有効です。例えば、「1週間、〇〇でテレワークを行い、その間の業務成果や課題、コストなどを検証し、結果を共有させていただけないでしょうか」といった具体的な提案です。小規模な成功事例を作ることで、社内の理解を得やすくなります。
- 懸念事項への対策提示: 会社側が最も懸念するであろう情報セキュリティ、勤怠管理、コミュニケーションの遅延などについて、自身で考えられる対策や、利用可能なツール、順守すべきルール(例: 公衆Wi-Fiの利用禁止、VPN接続の徹底、定時報告の実施など)を具体的に提示します。会社側の懸念を先回りして解消する姿勢を示すことが信頼につながります。
- 会社にとってのメリットを強調: 個人の希望として伝えるだけでなく、会社全体の視点から見たワーケーション導入のメリット(例えば、多様な働き方の促進による人材確保・定着、社員のエンゲージメント向上による生産性向上、オフィス関連コスト削減の可能性など)を整理して伝えることで、経営層や人事部門への説得力が増します。
このアプローチは時間がかかる可能性もありますが、会社の文化や現状に合わせて丁寧に進めることで、単なる個人の要望ではなく、組織全体の働き方改革の一環として受け入れられる可能性が高まります。
ワーケーション実践における基本的な注意点(制度有無に関わらず)
制度がない状況であれ、既存制度の活用であれ、ワーケーションを行う上で会社員として守るべき基本的な注意点があります。
- 情報セキュリティ: 会社の情報資産を扱う場所としては、自宅以上に注意が必要です。鍵のかかる場所で作業する、覗き見防止フィルターを使用する、公衆Wi-Fiは利用しない(テザリングやモバイルルーター、VPN接続を利用する)、離席時はPCをロックするなどの対策を徹底します。
- 勤怠管理: 通常勤務と同様に、定められた勤務時間中はしっかりと業務を行います。サボっていると誤解されないよう、可能な範囲で上司や同僚に業務状況を共有する、連絡が取れる状態にしておくなどの配慮が必要です。
- コミュニケーション: テレワークツール(チャット、ビデオ会議システムなど)を効果的に活用し、オフィスにいる同僚との情報共有や連携に遅れが生じないように努めます。必要に応じて、通常の会議へのオンライン参加や、非同期コミュニケーションの活用方法を工夫します。
- 社内規定の遵守: テレワーク規定や情報セキュリティポリシーなど、会社が定めた既存の規定は厳守します。不明な点があれば、事前に人事部やシステム担当部署に確認することが重要です。
子連れでのワーケーション計画における考慮事項
制度の有無に関わらず、小さなお子様連れでのワーケーションには特有の計画と準備が必要です。
- 場所選び: 子供が安全に過ごせる環境か、仕事に集中できるスペースがあるか、子育てサポート施設(託児サービス、キッズスペースなど)が利用可能か、といった点を考慮して宿泊先や滞在エリアを選びます。
- スケジュールの作成: 仕事の時間、子供との時間、家族全員での時間を明確に区別し、無理のないスケジュールを立てます。パートナーや同居家族がいる場合は、育児や家事の分担について事前に話し合っておくことが重要です。
- 現地でのサポート: 現地のファミリーサポートやシッターサービスの有無、または親戚や友人の協力を得られるかなど、子供の世話に関するサポート体制も確認しておくと安心です。
- 仕事と育児の切り替え: 仕事中は仕事に集中し、子供と過ごす時間はしっかりと向き合う、意識的な切り替えが必要です。子供が就寝した後や早朝を集中タイムにするなど、工夫を凝らしましょう。
これらの準備は、会社側へワーケーションの提案を行う際にも、「子連れでも業務に支障が出ないよう、このように計画しています」と具体的に示すことで、信頼を得やすくなります。
まとめ: 一歩ずつ、着実に
会社にワーケーション制度がないことは、すぐに実践できない、あるいは将来的に不可能であるということを意味しません。既存の制度を賢く活用する「現実的なアプローチ」や、会社に理解を広げ、試験導入を働きかける「段階的な提案」など、様々な方法があります。
大切なのは、なぜワーケーションをしたいのかという自身の目的を明確にし、それが仕事のパフォーマンス向上や組織全体のメリットにもつながる点を整理することです。そして、情報セキュリティや勤怠管理といった会社が懸念するであろう点に対する自身なりの対策を具体的に準備しておくことです。
これらのステップを一歩ずつ、誠実に進めることで、あなたの会社でもワーケーションという新しい働き方が実現可能になる日は、そう遠くないかもしれません。まずは、身近な上司や同僚に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。